映像が持つ情報量は想像以上! どんな情報が取り出せるか一緒に考えてみよう!
メディア学部 椿郁子 准教授
2016年4月に本学メディア学部に着任された椿先生。それまでは企業で映像の表示装置や撮影装置の研究開発を手がけておられました。今回は本学で取り組んでいる研究の詳細に加えて、映像処理研究の魅力や今後の展望などを伺いました。
■先生のご研究について教えてください。
これまで映像処理の研究開発をしてきたのですが、現在は特に映像編集の研究と、映像から情報を取り出す研究の2つに興味を持って取り組んでいます。映像編集の研究では、時間の長いビデオを短くするといった従来の編集ばかりでなく、映像自体に変化を加える編集方法も併せてできればと、研究しています。例えば、ある画像のサイズを小さくしたいと思ったとき、そのまま全体を縮小したり上下左右をトリミングしたりするのではなく、大事だと思う部分を残し、そうでない部分を取り去るという編集手法ができないかと研究しているところです。ちなみに、こういう手法を“ビデオリターゲティング”と言います。
例えば、研究室に学生が集まっている画像があります。この場合、映っている学生の顔が大事だとすると顔をなるべく残して、それ以外の部分、例えば机や背景の壁、ドアの空間をぎゅっと切り取るという編集ができます。今は静止画で説明しましたが、これを動画で実現しようと進めているところです。
この技術が将来、何に利用できるかは、まだわかりませんが、例えばホームページ内の限られたスペースに動画を貼るときに使ったり、さまざまな映像制作の現場で面白い使われ方がされたりすればよいなと思っています。
映像から情報を取り出す研究では、人物映像の顔画像から年齢や性別以外にどんな情報が得られるかということを検討しています。例えば、顔の映像からは、その人の脈拍や呼吸数を知ることが可能です。映像だけで、その人が緊張でドキドキしていることが分かってしまうかもしれません。そういう映像の中にある、さまざまな情報を取り出すソフトウェアを開発しようと取り組んでいます。まだ研究途中ですが、例えば映像に映った人の歩く姿勢から本人確認ができるという既存の研究と私の研究を組み合わせた活用方法などについて考えているところです。
原画像
通常の縮小
不要な部分を削除
■研究室の学生は、どんな研究をしているのですか?
今、4年生が卒業研究のテーマを検討しているところです。彼らは映像処理そのものより、プロジェクションマッピングやVR(バーチャルリアリティ)に強く興味を持っているので、そういうテーマを扱うことになるだろうと思います。プロジェクションマッピングの研究では、今ある技術というよりは、次にどんなことができるかを考える研究にするつもりです。具体的には、今よりもきれいに見せるための手法や、映像が投影される立体物の素材に合わせた投影方法について検討しています。例えば、屋外で壁などに映像を投影するとき、凸凹していたりツルツルしていたりと、素材によって表面の状態は違います。そういうときに、どう投影方法を変えれば、うまく投影できるのかという研究を始めています。
VRの研究も同様で、新しい使い方や応用について考えていくつもりです。これまで、VRは主にゲームで使われてきましたが、それ以外にどんな利用方法があるか、今、学生が研究しているところです。
■先生が映像処理の分野に興味を持ったきっかけとは?
大学時代、映像には非常に多くの情報が含まれていると知ったことからですね。刑事ドラマなどで防犯カメラの映像を解析したら犯人がわかるなんてシーンがありますが、そんなふうに映像解析によって、さまざまな情報が得られることを知り、興味を持つようになりました。また、情報には音声情報や文字情報などいろいろな種類がありますが、その中でも映像情報は見ただけでわかるという特長を持っています。「百聞は一見に如かず」や「一目瞭然」と言われるように、パッと見ただけで、いろいろなことがわかる。それが映像の魅力であり面白さです。
また、海外には、映像に映った人の瞳に映っている情報を取り出すという研究があります。黒目部分に映った情報から部屋の様子や誰と会っているのかなどがわかるのです。そんなふうに映像が持つ情報は、想像以上にたくさんあるので、いまだに興味が尽きません。
■今後の展望をお聞かせください。
今は情報が溢れている時代で、その中からいかに取捨選択するかが大切だと言われています。それは映像にも当てはまることで、YouTubeなどネット上にはいくらでも映像があって、当然、それらすべてを視聴することはできません。だからこそうまく取捨選択して、映像を使いこなしていくことが重要です。その取捨選択の部分に、私の研究を役立てていけたらと思っています。
また、本学に来て驚いたのは、学生たちが自身の卒業研究を「少しでも社会に役立てたい」と考えていることです。教員としては、それが実現できるようにできる限りサポートしていきたいですし、そういう学生の高いモチベーションや社会貢献の意識を卒業後も維持できるよう、お手伝いしていけたらと思っています。
■最後に受験生?高校生へのメッセージをお願いします。
将来、仕事に就くとき、自分の適性を知って得意なことを仕事にできたら、それは素晴らしいことだと思います。ただ、自分の得意分野を見つけることは、そう簡単ではありません。ですから大学の4年間は、それを見つけるための期間にしてほしいと思っています。
メディア学部には、いろいろな演習や実践的な学びがあるので、幅広い経験をする機会がたくさんあります。そういう多様な経験を積むことで、きっと自分の適性を知ることができるはずです。ぜひメディア学部で自分の得意なことを見つけて、それを将来の仕事に繋げてください。
■メディア学部WEB:
/gakubu/media/index.html
?次回は8月11日に配信予定です。