学生時代に身に付けた自ら学ぶ姿勢が、作業療法士になってからも役立っています
2022年8月26日掲出
医療保健学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻 澤田辰徳 教授
社会福祉法人農協共済 中伊豆リハビリテーションセンター 作業療法士 東川裕輝(2020年3月 医療保健学部作業療法学科 卒業)

2020年に医療保健学部 作業療法学科(現リハビリテーション学科 作業療法学専攻)を卒業後、静岡県伊豆市にある「中伊豆リハビリテーションセンター」で作業療法士として活躍する東川さん。在学時、所属研究室の指導教員だった澤田先生とともに当時を振り返り、本学で体験した学びや作業療法士の仕事について語っていただきました。
■まずは、在学当時の印象について、お聞かせください。
澤田先生(以下、澤田):東川君は、良い意味でまじめな学生でしたね。かといって、堅苦しい感じでもなく。医療職はボランティア精神が求められる仕事だと思いますが、そういう奉仕の心も強くて、例えばオープンキャンパスの手伝いを自ら申し出て、ずっと手伝ってくれていました。東川さん(以下、東川):先生のゼミにいた3、4年生の頃ですね。
澤田:うちのゼミ紹介には、例えば英語の論文を読むことになるとか、卒業論文は学内だけでなく学術誌にチームとして投稿するので、それ相応の質を求めるといった厳しいことが書いてあって、半数以上の学生は敬遠します。でも東川君はそれにも臆さず入ってきたよね。だから、とてもモチベーションの高い学生だという印象があります。
東川:澤田先生の研究室を選んだのは、先生が手掛けている研究の中で、自動車の運転支援に関するものがあったからです。当時、自分が免許を取ったばかりで運転好きだったということもあって、自動車運転支援にすごく興味を持っていて。自動車の運転で作業療法をするという話をあまり聞いたことがなかったので、面白そうだなと思ったのがひとつです。あとは、卒業研究で取り組むならとことん頑張ってみたいという気持ちがあったので、厳しいと聞いても迷いはなかったですね。今も入って良かったなと思っています!
澤田:正直に言っていいんだよ(笑)
東川:本当に厳しかったですが(笑)、結果的に先生の研究室で学べて良かったです。確かに英語論文を読むのは、思い返しても大変でした。でも自動車運転支援の研究に関しては海外の方が進んでいますし、海外の色々な評価を参考にしたいという面もあったので、英語論文を読む必要がありました。その経験が、今、臨床現場で力になっていると感じています。仕事を始めてからもやはり論文を読む機会は多いので、それに対する抵抗感は少ないですね。それに澤田先生の研究室に入っていなかったら、今の職場に行こうとも思っていなかったでしょうし。
澤田:東川君が就職した「中伊豆リハビリテーションセンター」は、彼が卒研テーマで取り組んだ自動車運転支援に関して、全国でも先駆的に取り組んでいるところです。病院内に自動車運転コースがあって、そこで作業療法士が運転指導をするという、かなり珍しいところなんです。基本的にうちの学生は就職場所を関東圏内で探す傾向が強いですが、東川君の就職した病院は、地方にある老舗です。自身の学びのためにそういう就職先を選んだということに、ガッツがあるなと思いましたね。
東川:先生に求人を紹介してもらって、一度、病院見学に伺わせてもらって。そのときは、就職先の場所は特に気にしていなくて、やりたいことをしたいと思っていました。結果、そこが一番自分の学びにもなるし、やってみたいと思えたので、就職先に決めたんです。
■卒業研究で取り組んだ自動車運転支援とは、どんな内容だったのですか?
東川:日本では病気やケガなどで身体が以前のように動かせなくなった方に対する自動車運転支援に関して、信頼のおける評価やその妥当性を測るものがない状況です。そこで、そういうものを作成しようと、先輩方が残してきた研究成果を踏まえつつ、同じゼミの学生と二人で卒業研究として取り組みました。具体的には、自動車を運転しているときに標識などに気づけるか、それを守れるか、運転中の体力的な部分はどういう様子か、危険行動はないかといったことを、0、1、2の三段階で評価するものをつくりました。澤田:自動車運転における作業療法の対象者は、日本では脳卒中の人がメインになります。また、自動車運転の評価で最も標準的な判断方法は、実際に乗車してみて評価することです。とはいえ、実際に乗ったとしても、自動車教習所の先生は疾患に関する知識はありませんよね。海外では作業療法士が教習所の先生と一緒に同乗して評価するという事例があって、日本でも徐々にそれが増えてきてはいますが。そういうわけで、今のところ日本では実際に乗車して運転評価を受けられない場合、病院で行う筆記や質問などによる検査で脳の病気の症状と照らし合わせて、運転できるかできないかを医師が判断するという形です。ですが、やはり実際に乗って運転してみないとわからないということは、世界的に言われています。ただ、日本ではその運転に関する評価がきちんと運転のダメなところをチェックできているか、誰がチェックしても同じ結果が得られるのかという点で検証がほぼなされていません。また海外ではそのような評価が色々つくられていますが、日本とさまざまな面で異なります。ですから、日本の道路事情に合わせた検査をつくる必要があるだろうと考えて、東川君たちと一緒に研究をしました。この研究は今の卒業研究生が受け継いで、引き続きデータをとって、その評価をブラッシュアップしていますが、東川君にもOBとしてプロジェクトに協力してもらっています。
■授業や先生の指導で印象に残っていることをお聞かせください。
東川:1年生のときに受けた基礎的な解剖学や生理学などは、すごく難しかったという印象があります。今まで全く触れてこなかった分野の単語を一から覚えないといけないので苦労しました。個