第28回 日本ペインリハビリテーション学会 学術大会 2024年6月8日
本シンポジウムでは、運動器慢性疼痛の治療戦略における運動療法の第一選択治療としての位置付けを踏まえ、双方向モバイルアプリを活用した運動療法に焦点を当てることが目的である。2021年に発刊された『慢性疼痛診療ガイドライン』によれば、薬物療法や手術的治療に先立ち、すべての患者に対して運動療法の実施が推奨されている。このガイドラインでは、運動療法単独または患者教育、認知行動療法との併用が強く推奨されている。
双方向モバイルアプリを介した運動療法は、通院と通院の間の院外でのリハビリ実施状況や疼痛の変化をアプリを通じて把握することで、疼痛の生物心理社会的モデルの枠組みの中で運動療法の効果をより高めるための新たな手段として注目されている。また、急性期において患部に対して直接的なアプローチが困難な場合でも、患部以外の部位に対する運動療法の適用により、中枢性の疼痛抑制メカニズムを活用し、患部の疼痛軽減や疾患の慢性化の予防が期待できる。このため、運動療法は急性期でも適用可能であり、早期からの積極的な取り組みが重要である。双方向モバイルアプリを利用した運動療法により、患者は自宅での運動を行い、そのデータをリアルタイムで治療者と共有できるため、炎症期からの運動療法の継続が容易になる。これにより、慢性痛の発生予防及び患者の生活の質の向上が期待される。