卒後の臨床看護技術教育における革新的スマートグラスを取り入れたデジタル教育ツールに関する共同研究開発契約を締結
順天堂大学と東京工科大学は、臨床現場の看護技術教育における革新的スマートグラスの導入に向けて2024年3月31日に共同研究開発契約を締結し、順天堂大学医学部附属順天堂医院と片柳研究所デジタルヘルス?イノベーションセンター?がコラボレーションした看護技術コンテンツの独自制作と、臨床看護教育における検証を開始しましたのでお知らせします。
革新的スマートグラスとは、東京工科大学で考案した医療用のARグラス**システムで、医療ミス防止用として開発されたものです。特徴は、手技に必要な画像を目の前に提示し、音声合成でテキストを読み上げます。また、コンテンツの自作機能を備えているため、施設の手順や現場の使用物品を活かしてコンテンツを作り込むことができます。ARグラスを装着した人の音声指示のみで動作を制御するため、両手を使う看護技術に適しています。この共同研究により、順天堂大学オリジナルの看護教材コンテンツを独自開発し、看護技術の向上とともに、新たなデジタル教材として展開させていくことを目指しています。
【研究の背景】
医療現場と看護基礎教育における看護技術教育方法及び看護技術到達度を比較した先行研究では、「点滴静脈内注射」「点滴の管理」などの診療の補助に関する薬剤の投与は、教育現場では演習授業を行なっておらず、医療現場の研修責任者は教育現場よりも高い教育水準を求めていたことが報告されています。看護技術の教育の方法について、動画教材やe-learningを用いた有効性は示唆されているものの教育効果や評価方法は未確立です。近年では、VR(Virtual Reality:仮想現実)の活用が報告されてきていますが、本研究同様、スマートグラス及びARグラスを活用し看護基礎教育の検証を行った研究はまだ確認できていません。
【本研究の目的】
本研究では特に看護師が行う点滴作成技術に着目しました。就任間もない新人看護師への看護技術教育に、ARグラスで、看護技術教育コンテンツを独自開発し、その効果を探索的に評価することを目的とします。点滴の準備は、患者に関する複雑なアセスメントは必要なく、ステーションなど比較的安定した環境で行われる技術である一方、医療安全及び感染対策上の重要な注意事項が多い手技の一つです。さらに、新人看護師が初期に習得しやすい技術の一つであるため、就任初期の集合研修で習得度を上げることは、現場支援としてOJT(On-the-Job Training)での活用が期待されます。このARグラスは、多くの新人看護師の技術教育の質の保証に貢献するだけではなく、新人看護師個々のペースで一連の技術を経験できることや、反復練習にも活用でき、研修を主催する側の効率化にも寄与することが期待されます。
【今後の展望】
今回の、点滴静脈注射、点滴の管理コンテンツ開発に続き、看護技術教育として必要不可欠な看護基礎技術のオリジナルコンテンツを開発し、それを適宜検証していく計画としています。また、新人看護師だけでなく、現職の看護師に向けてさらに高度な看護技術コンテンツを開発し、作業効率や安全性も含め検証したいと考えています。この様な、オリジナルコンテンツの開発で得られた知見を活用し、順天堂大学オープンイノベーションプログラム「GAUDI」及び東京工科大学と連携し、本学以外の看護施設での教育で活用できるようなソリューションを検討して参ります。
今後、看護技術教育に必要なコンテンツの開発を行い、新人教育だけでなく、経験者についてもその適応範囲を広げ、本システムの教育効果、記憶の定着効果について検証を行います。
* 片柳研究所デジタルヘルス?イノベーションセンター:東京工科大学により設立し2024年4月から始動したセンター。医療?介護?ヘルスケア関連領域に最新テクノロジーを融合させることで、人々が安全?安心、健康に暮らせる社会の実現に貢献することをめざす
** ARグラス:AR技術(Augmented Reality:拡張現実)を応用したスマートグラスの一種で、デジタル情報をグラスに重ねて表示できるデバイス
■片柳研究所WEB:
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