デジタルツインセンター

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特別座談会 第3回

新しい感覚を持つ世代に、魅力的な学びを提供したい

司会:野島 顔写真野島

デジタルツインセンターは、未知?未踏分野に挑戦するだけでなく、学生の教育を行う場として大切な役割を担っています。このセンターで若い人たちは、どのようにデジタルツインと関わり、何を学べるのでしょうか。

豊田 顔写真豊田

まず、企業の皆さんの協力で、デジタル産業の最先端の取り組みや課題にリアルに触れられることは、若い人たちにとって大きなプラスになると思います。彼らは上の世代にないようなデジタルとリアルを区別しない新しい感覚を持っていますが、そんな学生が現実と仮想の融合領域であるデジタルツインを学んで何が生まれるか。大いに楽しみです。

豊田 写真
生野 顔写真生野

最近の子どもたちのデジタルに向き合う姿勢は、明らかに変わってきてますよね。

豊田 顔写真豊田

現実と仮想を二項対立で考えていないので、リアルな自分とバーチャルなアバターを自然に両立させていますね。VRチャット空間の中と学校のクラスで、自分の人格を少しずつ変えるってことを違和感なく普通にやってますから。

喜田 顔写真喜田

自分は、若い人たちがあるメタバースアプリをユニークな使い方をして楽しんでいるのを見て感心しました。そのアプリはユーザーがオリジナルのアバターを作って交流できるものなんですが、メタバースの中に、知らない人が自分のアバターの容姿を採点してくれる部屋が立ち上がるんです。そこで、高い点数をもらって相手に感謝したり、採点する側は可愛いアバターを作った人にギフトをあげたりする。新しい形のデジタルコミュニケーションですよね。

喜田 写真
佐藤 顔写真佐藤

自分のアイデンティティを誰か評価してもらうなんて、リアルの文化ではありませんでしたよね。バーチャル空間ならではの新しい文化や価値観が生まれてるということでしょう。

豊田 顔写真豊田

デジタルツインセンターが、そうした新しい繋がりを生み出すプラットフォームを、「作る側」と「使う側」の両方の立場で学べる場になっていけばいいですね。

進化するデジタル技術に、柔軟な対応を。

佐藤 顔写真佐藤

デジタルツインは幅広い技術が関連しますから、学生がどんなことを中心に学ぶかについても多様な選択肢が考えられます。そのうち何をピックアップして、どう編集するか。それによってどういう意味や価値を生み出せるかということを考え、明確にしていくことがセンターとして重要です。学生に対しては、そのきっかけ作りをきちんとやってあげることが、教育のあり方として望ましいと個人的には思っています。どんな課題やテクノロジーを採り上げ、どう料理するか、「総合編集力」が問われるということですよね。

浜中 顔写真浜中

エンジニアの観点からお話しすると、近年、世の中の言語やライブラリーの開発のペースが上がっていることを痛感しています。今日旬だった技術が、来年も旬かどうかは誰にもわからない。若い人たちには、その時点で最もメジャーなことを教えるのがいいのでしょうが、それでも3年経ったら役に立たないなんてことは普通に起きる。このセンターに限らず、大学の教育は変化に柔軟に対応していくことが求められますね。

喜田 顔写真喜田

ChatGPTなどの生成AIを、教育の中でどう利用していくかという問題もありますしね。

生野 顔写真生野

確かに。私もプログラミングの講義を持っていますけれど、演習課題でChatGPTを使ってコーディングをやってみると、一応動くコードは作れる。でも、コードがわかる人間から見るとちょっと怪しいところがあって、しっかり内容を理解することが実用には不可欠です。同じように、これからデジタルツインの仮想空間やメタバースをつくるときも、シミュレーションして得られたアウトプットが最適かどうかという最終判断はAI任せにはできませんよね。作る人間にある程度、素養がないと。たとえば水の流れを表現しようとする場合に、シミュレーションどおりに作っても不自然になったりするのでは。やはり作る側に素養や経験値が必要かなと感じます。

喜田 顔写真喜田

それってアート領域ですごく当てはまる話ですね。自分が仕事で扱っている3Dの描画エンジンは、基本的に光のシミュレーションで、今の技術を使えば限りなくリアルに再現できます。でも、たとえばブラウザで動かしたりするには限界があって、最後はいろいろ手を加えたり、モデル化したりしてまとめ上げる。開発者が正しいと思って作っても、実装するには全然ダメなこともあって、結局、それらしく表現するためには、エンジニアリングのスキルとともにアート感覚が重要になったりするんです。

佐藤 顔写真佐藤

アウトプットの際に人の素養や経験値が必要かどうかは、目的によるでしょうね。喜田さんの言うようにアートの世界では最終的に人の手が不可欠だし、建築の世界でも実施設計までAIでできるかというと、まだ担保できていないと思う。生成AIは、サジェストとしては現段階でも機能していますが、実行する上で本当に役に立つかっていうと、まだまだこれから。そこまでできるようになったら、関わる人間に必要なスキルや経験も変わるでしょうし、当然、教育でのAIの扱い方も違ってくるはずです。