デジタルツインセンター

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特別座談会 第4回

本気で好きであることが、成長を支える一番の力

生野 顔写真生野

ここにいる皆さんの会社では、先進的なVRやメタバース、建築デザインを進めるうえで、優秀なエンジニアの力が不可欠だと思います。実際の現場ではどんな能力を持つ人材が必要なんでしょうか。

豊田 顔写真豊田

デジタルと建築の融合領域は、その両方の知識や技術が支えていますが、建築学科の人は建築士試験のための勉強が最優先になるので、VRが得意ですとか、AIの言語を使えますみたいなデジタルに強い人は少ないのが実状です。そういう人にもっと来てほしいけれど、コンピュータが好きだから独学で学んだというような「特殊解」みたいな人しか出てきません。ARやVRは産業としては人気が出てきてニッチからマスになりつつあるけれど、まだ大学教育のメジャーな対象になっていないので、専門的人材は明らかに足りてないですよね。ほかの皆さんの会社はどうですか。

豊田 写真
喜田 顔写真喜田

先ほども触れましたが、我々の業界では、エンジニアリングのスキルとアート感覚を兼ね備えたテクニカルアーティストと呼ばれる専門家が貴重な存在になっています。この2つに加えて、「体験設計」までカバーできる人が理想です。でも現状では、ゲーム系から探すか、あとはいわゆる「野生のプロ」、つまり自分の興味をエネルギーに独力で学んだり、現場で鍛えられて実力を身につけた人を見つけるしかありません。野生のプロって、自分でモデルを作ってユニティで実装して簡単なスクリプトを書くみたいなことを一人でやれちゃうんですが、こんな人は滅多にお目にかかれません。

佐藤 顔写真佐藤

普通の採用ルートには、まず乗ってこないですね。教育によって、そういう人たちのパイを増やしていくことも重要かも知れませんね。

司会:野島 顔写真野島

その役割をデジタルツインセンターが担えたらいいですね。

喜田 顔写真喜田

はい。自分が人間の成長の要因として最も大切だと思っているのは、本人がどれだけ対象を好きかということですね。少しくらい弱点があっても、本気で好きならば結構カバーできちゃうので。情熱を持って取り組んで、自分で何らかのものを実際にアウトプットまで持っていく。そんな経験を積んだ人が強いんです。

浜中 顔写真浜中

VRチャットで面白いことをしてる人の中にも優秀な人材が多いですよね。たとえば独創的なアバターを作るためには、ユニティ上のアバターの仕組みのスケルトンに手を加える必要があるんですが、そこにとんでもない技術を注ぎ込む人がいたりする。自作アバターにパーティクルみたいなものを仕込んで、登場とともに花火が上がったり、飛行機みたいに飛んできたりして注目される人も。そんな人が刺激になってメタバース空間が勉強会みたいに盛り上がるんです。

浜中 写真
豊田 顔写真豊田

格好のトレーニングフィールドになるんですね。大学の教育の参考になりそうです。

デジタルツインを合い言葉に、幅広い学生に裾野を広げていく

浜中 顔写真浜中

僕が現場で一緒に働きたいのはどんな人か、という観点から言うと、やっぱりガチのプログラマーに来てほしいですね。プログラミングが大好きで、何も言われなくても情報を集めて、勝手に何か作ってるみたいな。そういう人が現場で力を発揮できる思うんです。自分も小さい頃からパソコンに夢中になって、独学でゲームを作ったりしていたタイプですが、楽しいからこそ深くのめり込める環境を学生たちに提供できたらいいですね。

香川 顔写真香川

そういう特別な素養や人一倍の情熱を持つ人にアピールするのはもちろん、裾野を広げていくことも大切なことだと感じています。デジタルツインに取り組む際は、先端のエンジニアリングやプログラミングを深掘りするだけでなく、インターフェースの部分とかリアル社会との接点などにフォーカスしていくアプローチもありますよね。そういった部分で活躍する人たちもこのセンターで養成していくようにすれば、より幅広いタイプの学生に門戸を広げられるはずです。

香川 写真
豊田 顔写真豊田

そうですね。最初は皆さんの会社で手がけているエンタメやアート系のVRやメタバースへの憧れをきっかけにして、いろいろなタイプの学生に興味を持ってもらえればと思います。

香川 顔写真香川

大学の教員では教えられないリアルなものづくりの経験やノウハウ、大切にしていることなどを、業界の皆さんから伝授していただけたら嬉しいですね。

司会:野島 顔写真野島

同感です。ところで、もともと「野生のプロ」であったであろう皆さんが今の仕事に取り組むうえでの一番のモチベーションは何ですか。

喜田 顔写真喜田

シンプルに作品作りが楽しいとか、普通にコーディングするのが楽しいとか、そういうことですね。

浜中 顔写真浜中

僕のようなエンジニアにはアドレナリンが出る瞬間があるんです。自分が狙ったとおりの動きが一発でできたときとか、できるだけ最適化してパフォーマンスを測ったらCPUパワーが低くなったときとか。遠大な目標というより、意外に身近な感動が原動力になっていますね。

豊田 顔写真豊田

今の教育は、正しいこと以外やらない、無駄なことはしないっていう前提で行われていると思うんですが、まず、これをやりたいっていうモチベーションありきの学びって大切ですよね。だからこのセンターでは、最初にこういうことできるよっていうのを提示して、じゃあそれをやるためには何を学ぶ必要があるのかっていう、ある意味、応用と基礎の順番を逆にするようなプログラムを検討してもいいかもしれませんね。