CG?ゲーム制作技術の今と将来

メディアコンテンツコース 特集ページ

東京工科大学 HOME> 威廉希尔官网案内> メディア学部> CG?ゲーム制作技術の今と将来

CG?ゲーム制作技術の今と将来

■専門分野の今

 近年の映像コンテンツ、ゲームコンテンツで用いられるCG技術は非常に高度化しています。劇場映画やストリーミング作品を観るのが好きな方は、「アナと雪の女王」「ライオンキング」のようなCGアニメ映画の完成度の高さをご存知だと思います。日本のアニメ作品「鬼滅の刃」「竜とそばかすの姫」「天気の子」といった大ヒットアニメ作品においても、手描きの作画だけでなく、CG技術を駆使した映像表現によって物語の世界が魅力的に描かれています。また、ゲームをプレイするのが好きな方は、「モンスターハンターライズ」「Ghost of Tsushima」「原神」「Final Fantasy XV」「FINAL FANTASY VII REMAKE」といった作品の美麗な映像表現に驚いたことがあるのではと思います。それぞれの作品制作に携わるCGクリエイター/ゲームクリエイターの技能が素晴らしいことは言うまでもありませんが、クリエイターを支える制作環境や基盤技術の進歩により、高度な映像表現を少ない手間で実現できる環境が整備されつつあります。
 さらに、今やその技術はプロジェクションマッピングや劇場映画やテレビ番組、ゲームコンテンツでの活用にとどまらず、VR?ARコンテンツなどの新しいメディアに応用されたり、建築?土木分野や自動車産業におけるシミュレーション?ヴィジュアライゼーションの手段として用いたりと、あらゆる業界に影響を及ぼし始めており、とてもエキサイティングな転換期を迎えています。

■専門分野の20年間の変化?変遷?革新的な出来事

 メディア学部が設立された1999年の頃は、まだCGを使った映像コンテンツそのものが珍しい時代でした。劇場映画では”Star Wars : Episode 1”、“The Matrix”、”TOY STORY”といった作品において3DCG表現技術が本格的に活用されるようになりました。家庭用ゲームはすでに初代PlayStation、NINTENDO64などにおいて3DCGによる作品が人気でしたが、まだ画質は低く、映画の映像品質には遠く及びませんでした。
 2010年ぐらいまでの間は、PCやゲーム機器のスペックの向上に合わせて、CG技術が目に見えて進化していきます。劇場映画ではディジタルシネマ対応、テレビ番組においてはハイビジョン画質対応の高精細な映像制作が行われるようになりました。その画質にふさわしい写実的な質感やライティングの表現技術が確立し、迫力のある映像表現に欠かせない破壊や自然現象のシミュレーション技術なども格段に進歩しました。ゲーム業界では家庭用ゲーム機の世代がPlayStation3やWiiに移行し、プログラマブルシェーダなどの技術によって映画に迫る映像表現をリアルタイムで表現できるようになりました。
 そして、世界中のクリエイターや研究者の努力と高性能なグラフィックボードやモバイルチップのおかげで、今日のゲーム表現技術は劇場映画のそれを追い抜くところまで迫っています。優れたゲーム作品では映画と区別がつかない映像の品質を達成していますし、さらに、その世界を自由に動き回ったり、プレイヤーが行った結果によって即座に世界が変化したりするような、劇場映画やテレビ番組を超える体験を提供可能になっています。また、そのような優れた技術が劇場映画やテレビ番組の作品制作に取り入れられて新たな映像表現が実現するという、これまでにないたいへん面白い変化が起きています。

パペットアニメーション制作への最新CG技術の応用例(学生作品)

 メディア学部でのCGクリエイター/ゲームクリエイター教育?研究はこのような産業界の変遷?革新とともに進んできており、常にその時代の最先端技術を先駆けて学び、さらに次世代技術の探求を行ってきました。その結果として、1期生から現在に至るまでの幅広い世代の卒業生が業界のさまざまなポジションで活躍しています。

学生作品の例

■専門分野の近未来について

 同じCG技術を扱う分野であるにもかかわらず、少し前までは映像業界とゲーム業界とでは接点が少なく、それぞれの業界のノウハウが共有されることはあまりありませんでした。しかし上記のようにゲームで用いられるリアルタイムグラフィクス表現技術が飛躍的に進化したことから、映像業界においてもその技術を積極的に取り入れる動きが活発化しています。通常、劇場映画作品においては1秒間に24枚の画像を表示しますが、その1枚の画像を生成するために従来の方法では5時間近くの計算を要することも珍しくありませんでした。そして、それを数百台のサーバPCで分散処理して制作時間の短縮を図っていたものの、そのために大規模な設備投資が欠かせませんでした。ゲームで用いられるリアルタイムグラフィクス技術を活用すると、なんと5秒未満で1枚の画像を生成できてしまいます。このインパクトは非常に大きく、世界中のスタジオがこの技術を使った新たな制作手段を取り入れ、作品制作の効率アップと品質の向上に取り組み始めています。実写撮影を伴う劇場映画やテレビ番組だけでなく、アニメ作品制作においてもこのような動きが活発です。私の研究室でもこの業界動向に伴う新しい技術を研究していますが、今後もどんどん新しい技術?手法が生まれてくるであろう、たいへん興味深い分野です。

川島研究室におけるゲーム制作技術を応用したアニメ制作システムの研究事例

 ゲーム業界においても、次世代に向けた革新技術が模索されています。まず、PlayStation5などの次世代ゲーム機器の登場により、物理的に正確な光や反射を行うRealtime Raytracingの計算が可能になり、これまでよりもさらにリアルで魅力的な映像表現を行うことができるようになりつつありますが、この技術はさらにその次の世代に向けて進化していきます。また今後、5Gなどの高速通信網が普及してくることにより、サーバ上でゲームに必要なすべての演算を行い、スマホなどの簡易な機器でも非常に大規模で高精細なゲームをプレイ可能になるクラウドゲーミング技術も本格的に実用段階に近づくでしょう。その他、機械学習や空間オーディオ技術など、さまざまな技術の応用が期待されており、将来がとても楽しみです。

■高校生の皆さんへ

 高校生の頃に自身の将来像を描いて、それに合った大学を選ぶというのはとても難しいことだと思います。とくに、映像やゲームの分野はエンターテインメントの要素が強いため、これらを将来の目標に定めるのは、なんだか後ろめたいことに思えてしまうかもしれません。迷っている皆さんにはまず、自分が映像やゲームを観たりプレイしたりして楽しみたい側なのか、それともそれを創って皆に楽しんでもらいたい側なのかを考えてみてほしいです。たとえばFortniteやMinecraftなどでのゲームでのクラフト、工作やプラモ?模型作りが好きなら、CGクリエイター/ゲームクリエイターの素質はバッチリです。また、この記事で紹介しましたように、この分野で扱うICT(情報通信技術)は非常に高度で、学問?研究分野としてもレベルが深く、学び甲斐があります。もちろん、クリエイターの多くは創ることとユーザとして楽しむことの両方が好きですし、創る側になったら作品を楽しめないということはありません。
 また、映像やゲームのことを学ぶための学校選びで悩む方もいらっしゃると思います。CGクリエイター/ゲームクリエイターといってもさまざまな専門分野がありますので、必ずしも全員に画力が必要なわけではありませんし、プログラミングや数学?物理の知識が全員に必須なわけでもありません。私はこれまでいろいろな大学?専門学校での教育に関わり、それぞれの役割の違いを見てきましたが、その経験を踏まえて、皆さんには次のような視点で進学先を選んでいただきたいです。

①専門学校:CGソフトウェアやプログラミングのオペレーション技術を中心に集中的に学び、即戦力を目指したい
②美術大学:ICTよりも美術的表現に特化したデザイン技術を学びたい
③情報メディア系学部:ICTと美術的表現をバランスよく学び、相互を活かすための知識?技術を学び、研究したい
④理工系学部:ICTを基盤とした専門知識?先端技術を学び、研究したい

 メディア学部でのCGクリエイター/ゲームクリエイター教育は③に位置づけられます。CGやゲームはコンピュータでの計算によって画像や動きを生成しますから、優れた表現のためには優れた技術が必要です。近年の産業界では、とくにそれを実践できる人材(テクニカルアーティスト)が求められており、そのような人材が各スタジオの未来を切り拓く鍵になっています。メディア学部で学んだ卒業生の多くが、そのようなポジションで活躍しています。ぜひ、皆さんもそれに続いてほしいと思っています!

このWebページでは、メディアコンテンツコースの川島先生にお話をうかがいました。

教員プロフィール
メディアコンテンツコース 川島 基展 特任講師

■私の家では小学生のときにはテレビゲームを買ってもらえず、その反動で中学生になってからゲームに夢中になっていました。その後、友人の「お前ゲーム好きだからそういう系の学部行けば?」という適当なアドバイスで選んだ大学で学び始めたCG制作?ゲーム開発にドハマリして、学生の頃からフリーランスとしてCG制作の仕事を始めました。それが今の仕事に直結しています。振り返ってみれば、たまたまこういう専門にたどり着けたというだけですが、好きなことを仕事にできて、本当に幸せだと思っています。メディア学部のクリエイター教育?研究には学部設立時から携わってきていますが、今後も実務家教員として、この分野を目指す学生の皆さんの熱意に応え、最新の知識と技術、さらにその先を切り拓くためのスキルを指導していきたいです。